勝てなかった原因は、手法ではなくエントリーの回数でした。
自分は1週間で37回叩いて口座の7割を失い、その3週間後、回数が21回まで減った週に、初めて5営業日すべてプラスで終えました。手法は何ひとつ変えていません。変えたのは、たった1行のルールだけです。

損切りしたのに、5分後にはまた入っている
損切りをして、椅子から立ち上がります。台所に行って水を飲んで、今日はもう終わりにしようと決めます。
それなのに、5分後には同じ椅子に座ってチャートを開いています。しかも「よし、入るぞ」と決意して入ったわけではありません。気がついたら、手が勝手に注文画面まで動いていた、という感じです。
自分はこれを、意志の弱さの問題だと長いこと思っていました。「自分で決めたルールがこうもあっさり崩れるあたり、我ながら意志の弱さに苦笑いです」と、実際に自分の記録にそう書いています。
でも、そうではありませんでした。もっと単純で、もっと厄介なものが原因でした。
リベンジとは別ものでした
取り返そうとしてしまう心理については、これまでも何度か書いてきました。負けた悔しさで、次の一手が雑になるやつです。
ただ、今日の話はそれとは別です。というのも、自分の場合、負けた日だけでなく、勝っている日にも同じことが起きていたからです。
含み益をきちんと取れて、気分よく終わった日でも、なぜか「もう一回だけ」と入り直しています。取り返したいわけではありません。悔しくもありません。それでも回数だけが増えていく。
つまり、損切りルールを守っても治らないのです。損切りは損の大きさを管理するもので、回数を管理するものではないからです。ここが自分の盲点でした。損切りができるようになったから大丈夫だと思い込んで、回数のほうは一度も数えたことがありませんでした。
37回、29回、21回。並べてみて言葉を失いました
自分の3週間の記録です。数字はそのまま出します。
7月6日からの週は、37回エントリーして14勝23敗、マイナス63,623円。口座は88,274円から24,651円まで減りました。7割が消えた計算です。
翌週の7月13日からの週は、29回で19勝10敗、プラス22,052円。
そのまた翌週の7月20日からの週は、21回で15勝6敗、プラス25,990円。5営業日すべてプラスでした。
37回、29回、21回。回数が減るのに合わせて、成績が戻っています。念のため断っておくと、7月6日の週の直接の原因は、証拠金に対して大きすぎるロットで持ったことです。回数だけのせいではありません。損切り自体は5日間すべて実行できていました。
それでも、取引履歴を並べ直したとき、いちばん目に付いたのは回数のほうでした。1週間で37回。1営業日あたり7回以上、自分は注文ボタンを押していたことになります。「取引履歴を時間帯で並べ直してみて、言葉を失いました」というのが、そのときの正直な気持ちです。
意志が弱いのではなく、脳がそういう作りらしい
自分だけの話ではないようです。
個人投資家を調べた有名な研究に、たくさん売買する人ほど成績が悪かった、というものがあります。6万口座以上を追いかけたもので、いちばん頻繁に売買していた層は、市場平均を大きく下回っていました。原因として挙げられているのは、手法の優劣ではなく「自分には見えている」という思い込みのほうです。
台湾のデイトレーダーを大人数で追った研究では、8割以上が損失で、勝ち続けられていたのは1%に満たなかったそうです。しかも、損をしている人たちが取引全体の7割以上を出していました。回数が多いほうが負けている、という関係が、けっこうはっきり出ています。
もうひとつ、腑に落ちた話があります。「あと少しで勝てた」という惜しい負け方は、脳のなかでは実際に勝ったときと似た反応を起こすらしいのです。しかも、いつ勝てるか分からない不規則な報酬のほうが、その反応は強くなるとのことでした。
だとすると、損切りした直後に「もう一回だけ」と手が動くのは、順番として自然だということになります。惜しい負けほど、脳は次を促してくるわけです。
ここを知ったとき、自分はだいぶ楽になりました。意志が弱いから止まらないのではなく、止まりにくい仕組みのなかに入っている。であれば、意志で押し返そうとするのが、そもそも筋の悪いやり方だったということです。
自分を変えたのは、たった1行のルールでした
やったことは拍子抜けするほど単純です。
「17時以降はMT5を閉じる」。これだけを、その週の頭に決めました。
なぜ17時かというと、時間帯ごとに集計してみたら、はっきり分かれていたからです。7月13日からの週で言うと、8時から10時台の19回はプラス22,050円。一方、17時から19時台の6回はマイナス5,902円でした。夕方にやっているのは、たいてい「もう一回だけ」のほうだったのです。
回数を直接「1日5回まで」と決めたわけではありません。時間で切っただけです。それでも結果として、その週の想定外のトレードは1件も起きませんでした。
自分はもともと、意志と気合で自分を動かそうとしてきた人間です。会社の資金繰りも、体調も、それで乗り切ろうとして、今年の1月に身体のほうに止められました。心臓に問題が見つかって、断酒と減塩と水分制限で生活が一気に変わりました。あのとき初めて、気合で押し切るやり方はもう自分には使えないのだと分かりました。
だから今は、自分を変えるのは意志ではなく1行のルールだと思っています。守れる大きさまで下げた1行を、先に置いておく。あとはその通りにするだけです。判断は自分の気分ではなく、決めた1行のほうに任せます。
夕方にPCを閉じたあと、正直そわそわします。手持ち無沙汰です。だから自分は、そのままフードデリバリーに出るようにしました。負けた日でも、配達から帰ってくると心が軽くなります。チャートから離れる時間を、別の用事で埋めてしまうのが、自分にはいちばん効きました。
回数を数えるだけで、景色が変わります
新しい手法もインジケーターも、今回はひとつも増やしていません。
やったのは、約定履歴を週単位で数えたことと、1行のルールを置いたことだけです。それでも、37回が21回になり、その週の成績が変わりました。もちろん、たった3週間の話です。数か月ならしてみないと、本当に勝てているのかは分かりません。そこは正直に書いておきます。
ただ、もし今、勝てない理由を手法のせいだと思って探し続けているなら、いちど先週の約定回数だけ数えてみてもいいかもしれません。何回入ったか、その回数のうち何回が「もう一回だけ」だったか。それを見るだけで、けっこう景色が変わります。自分はそうでした。
回数を数えるのは、5分もかかりません。今日はそれだけで十分だと思います。
自分はこうした検証と失敗を、毎日noteに書いて公開しています。誰が見ているかは分かりませんが、最低でも自分だけは見ている、という意識で続けています。もし同じところでつまずいている方がいたら、noteのフォローだけしておいてもらえると嬉しいです。
参考
- Barber & Odean (2000)「Trading Is Hazardous to Your Wealth」(Journal of Finance/UC Berkeley 掲載PDF)
https://faculty.haas.berkeley.edu/odean/papers current versions/individual_investor_performance_final.pdf - Barber, Lee, Liu & Odean「Do Individual Day Traders Make Money? Evidence from Taiwan」(論文PDF)
https://faculty.haas.berkeley.edu/odean/papers/Day Traders/Day Trade 040330.pdf - Barber & Odean (2011)「The Behavior of Individual Investors」(UC Berkeley 掲載PDF)
https://faculty.haas.berkeley.edu/odean/papers current versions/behavior of individual investors.pdf - Clark et al. (2009)「Gambling Near-Misses Enhance Motivation to Gamble and Recruit Win-Related Brain Circuitry」(Neuron/PMC)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2658737/ - Winstanley, Cocker & Rogers (2011)「Dopamine Modulates Reward Expectancy During Performance of a Slot Machine Task in Rats: Evidence for a Near-miss Effect」(Neuropsychopharmacology)
https://www.nature.com/articles/npp2010230 - Forex Trading Statistics(BestBrokers/ESMAのリテール損失率データを含む)
https://www.bestbrokers.com/forex-trading/forex-trading-statistics/
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