フードデリバリーは「借金返済の副業」になるか──2万件配達して分かった正直な数字

副業・お金の立て直し

約5年前、初めて配達バッグを背負った日の自分は、「これで毎月の返済が少しはラクになるはずだ」と考えていました。あれからもうすぐ丸5年。Uberだけで数えて20,128件を配達した今、同じ質問をぶつけられたら、イエスともノーとも言い切れない答えになります。

「借金 返済 副業」で検索して、フードデリバリーの求人記事にたどり着いた人は多いと思います。そこには景気のいい月収の見出しが並んでいますが、あの数字が出る働き方と、副業として続けられる働き方は、まるで別物でした。今日は、当時の自分のように「これで返済に充てられるのか」を知りたい人に向けて、5年分の正直な数字と、その裏でかかるコスト、そして「そもそも返済に効くのか」という一番大事な問いについて書いてみます。

まず、自分の数字を正直に置いておきます

自分はUberから始めて、途中で出前館、いまはなきWolt、最近だとロケットナウと、いくつかのアプリを併用しながら走ってきました。Uberだけの記録で、4年11ヶ月・20,128件。雨の日も夏の日も、ずっと淡々と積み上げてきた数字です。

いまの稼働は、1日3時間を限度であり目標にしています。件数にすると、少ない日で7〜8件、多い日で12件くらい。本業の合間にこれを続けて、月の手取りは平均すると10万円前後、多い月で12〜13万円。これが現在の実感の数字です。

世間の調査も補助線として並べておきます。Uber Eats配達員の平均時給は男性1,369円・女性1,320円という調査があります。出前館は配達員272人への調査で、1件平均653円・平均時給1,438円と主要社の中では高めの数字が出ています。時給1,400円前後と聞くと悪くないように見えますが、これは固定給ではありません。完全出来高制なので、場所と時間帯と動き方で大きく振れます。鳴らない日は、時給換算で目を覆いたくなる日もあります。

「月25万円」は嘘ではない。ただし、あれは副業の数字ではない

「月25万〜29万円稼げた」というような体験談を見かけます。あれは嘘ではないと思います。なぜなら、自分にも稼げていた時期があるからです。

コロナ禍で本業の仕事が減ってしまった時期、自分は1日7時間、配達で走っていました。それにくわえて残った本業もこなしていたので、寝る以外はほとんど働いているような生活です。その稼働で、フードデリバリーだけで月25万円前後。そこから返済に回し、いろいろな支払いに回して、あの時期をしのぎました。

つまり、ああいう数字はほぼ専業の稼働量で出るものです。本業を持ったまま、健康と生活を保って続けられる「副業」の稼働とは、前提がまるで違います。とはいえ、稼げないと言いたいわけではありません。本業があっても、本業の時間をある程度コントロールできるのであれば、月30万円前後までは「やろうと思えば稼げる」仕事です。ただしそれは、あの頃の自分のように、生活のかなりの部分を差し出す働き方になります。1日数時間の副業なら、月数万円から10万円前後。その幅のどこに自分を置くか、という話なのだと、両方を経験した自分は思っています。

「稼いだ額」が、そのまま残るわけではない

もうひとつ、始める前の自分が分かっていなかったのがここです。振り込まれた額から、さらに引かれていくものがあります。

自転車の整備費とパンク修理、配達アプリを回すための通信費。バイクならガソリン代と保険。地味ですが、毎月じわじわ効いてきます。そして税金です。本業以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。整備費や通信費などは経費にできますし、2026年分からは基礎控除が104万円に引き上げられるといった変更もありますが、いずれにしても「振り込まれた額イコール自分の取り分」ではありません。

もっと大事なのが労災です。業務委託の配達員は、会社員と違って労災保険が自動では効きません。事故に遭っても、何も備えていなければ治療費も休んだ間の収入も自分持ちです。2021年9月からは自転車配達員も労災保険に「特別加入」できるようになりました。保険料は全額自己負担ですが、車道を毎日走る仕事なので、ここは稼ぎの計算より先に考えておくべきところだと思います。

それでも勧められるのは、稼ぐ額を自分で決められるから

こうやってコストの話を並べると、夢のない仕事に見えるかもしれません。それでも自分がこの副業を人に勧められると思うのは、稼ぐ額を数万円から20万、30万円の間で、自分でコントロールできるからです。

辞めたいときに辞められて、増やしたいときに増やせる。シフトもノルマも上司もいません。返済中の家計は月によって余裕が変わりますから、「今月は多めに、来月は控えめに」を自分の裁量で決められるのは、固定シフトのアルバイトにはない強みです。もちろん、健康であることが大前提です。体を壊せばゼロになる働き方でもあります。

もうひとつ、始めるハードルの低さと、お金になる速さも書いておきます。登録すればすぐに始められて、報酬は1週間程度で現金化できます。返済に追われているとき、この「すぐ現金になる」は想像以上に心強いものでした。だから、体は動くのに悩んでばかりで動けていない、という人には、まず今日、登録だけでもしてみることを自分は勧めます。悩んでいる時間は1円にもなりませんが、走った時間は必ずいくらかになります。

で、肝心の「返済に効くのか」という話

月10万円前後の上積みは、返済中の家計には確かに大きいです。コロナ禍の月25万円の時期は、実際にそこから返済と支払いを回していました。ただ、5年やって思うのは、フードデリバリーは返済の「即効薬」ではない、ということです。

お金の専門家の話を読むと、「副業で収入を足す」より先に「固定費を削る」ことを勧めているものが多くあります。無理な稼働で体を壊せば医療費で相殺されてしまう、という指摘もあります。これは自分の実感とも合っていて、過去を振り返っても、サブスクをはじめとした固定費の削減は何度も効きました。

いちばん効いたのは家賃です。仕事の状況が厳しくなった時期、毎月決まった額が何があっても出ていく家賃の重さを、嫌というほど味わいました。コロナ禍の頃は緊急事態宣言で補助が出る場面もありましたが、そういう特殊な事情がなければ、家賃はただ淡々と出ていくだけです。大家さんへの減額交渉は言い出しづらいものですが、それでも定期的に検討してみる価値はあると、自分は思っています。

だから位置づけとしては、こうです。フードデリバリーは、借金を一気に減らす道具ではなく、「動きながら家計を立て直すための時間稼ぎ」。毎月の下支えを作りつつ、その間に固定費を削り、借金の根っこそのものをどう整理するかを考える。その時間を買う手段として見ると、ちょうどいい距離感になります。

50代の体で、続けられるのか

最後に体の話です。50代で始めるとなると、ここが一番の不安だと思います。

正直に言うと、きついのは夏と真冬です。自分はいま、10時半から、日によっては13時半か14時ごろまでの昼の時間帯をメインに走っていますが、真夏日や猛暑日はこの時間帯が一番過酷です。ネッククーラーを着け、首に濡らしたタオルを巻き、水分補給を意識的に増やして、なんとか回しています。冬はヒーターベストを着込んでの稼働です。

そして、1日7時間走っていた自分だから言えることですが、あの働き方は続きません。いま1日3時間を徹底しているのは、体調のことがあるからです。寝る以外働くような稼働は、緊急避難としては成立しても、5年続ける働き方ではありませんでした。稼げる日ほどもっと走りたくなりますが、そこで止まれる設計にしておくことが、50代がこの仕事を「続ける」ための条件だと感じています。

向く人と、向かない人

2万件走った上での、自分なりの整理です。体を動かすことが苦にならず、稼働時間の上限を守れて、月数万円から10万円前後の下支えに意味がある人には、現実的な一手だと思います。逆に、一気に返済を進めたい人には向きません。それは専業並みの稼働の世界で、自分がコロナ禍にやったように一時的には可能でも、体力と生活を差し出すことになるからです。

それから、借金返済で悩むほどではなくても、「あわよくばカードローンでちょっと借りて飲みに行こうか」というくらいの人なら、隙間時間の配達で交際費の一部くらいは十分に捻出できます。借りて飲むのと、走って飲むのとでは、月末に残るものがまるで違います。

そして、毎月の返済そのものが家計を圧迫しているなら、収入を足す前に、固定費の見直しと、借金の整理の仕方そのものを考えるほうが先かもしれません。借金の根っこをどう解くかについては、また別の記事で書くつもりです。

一発逆転の話は、ここにはありません。ただ、配達で作った月10万円前後と、削った固定費の分だけ、家計は確実に崩れにくくなりました。自分にとってフードデリバリーは、その「崩れにくさ」を買う副業です。


参考

📎めいるす「Uber Eats(ウーバーイーツ)配達パートナーの報酬」
https://meals.iid.co.jp/uber-eats-delivery-partner-reward/
📎PressWalker「出前館配達員272人調査」
https://presswalker.jp/press/69810
📎マネーフォワード クラウド「フードデリバリー配達員の確定申告」
https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/53365/
📎一人親方労災保険組合「フードデリバリー配達員向けの労災保険・特別加入」
https://rousai-hoken.jp/column/9687
📎政経東北「フードデリバリー月25万円は夢ではない」
https://www.seikeitohoku.com/food-delivery-250000yen-per-month-no-longer-dream/
📎みずほ銀行「借金返済のコツ」
https://www.mizuhobank.co.jp/loan_card/article/no_28/index.html

この記事は KK@副業クロスロード(50代・本業+副業フードデリバリー+兼業FXの三足のわらじ)の実体験の記録です。一発逆転ではなく、毎日崩れないことをテーマにしています。

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