副業の「掛け算」は、収入が何倍にもなるという話ではありません。1つの行動が、2つ以上のことに同時に効いている状態のことです。
自分は本業のほかに、配達と発信とFXを抱えています。数だけ見れば副業を重ねている側ですが、お金になっている副業は、いまも配達の1本だけです。本数を足すほど、全部が自分の体1つにぶら下がっていく。足し算を続けて身体に止められて、ようやく掛け算との違いが分かりました。
この記事では、小さな副業の収入が普通であること、足し算と掛け算の違い、そして自分が足さなかったもの・断ったものを、実際の数字で書きます。
副業の4割は、月5万円に届いていません

最初に、世の中の副業の実際の大きさを置いておきます。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が2022年10月に、副業をしている11,358人を対象に行った調査があります。すべての副業を合わせた月の収入は、5万円未満が4割を超えていました。5万円から10万円未満が30.0%で、10万円以上は3割に届いていません。
副業をいくつ持っているかも聞かれていて、1つだけの人が78.0%、2つが17.6%、3つが3.3%、4つ以上は1.1%でした。副業を複数持っている人は、5人に1人強です。
もうひとつ、自分に刺さった数字があります。同じ調査で、就業者のうち副業をしている人の割合は全体で6.0%でしたが、50代の男性は4.4%で、性別・年代別に見て一番低いという結果でした。
月数万円の副業を「こんな額では意味がない」と感じているなら、それは少数派の悩みではありません。副業の世界では、むしろ多数派の姿です。そして50代の男性は、その副業そのものに、一番踏み出せていない層です。
自分の配達も、最初から大きかったわけではありません。今年3月の記録を見返すと、ランチの2時間で配達できたのは3件、報酬は1,350円でした。信号と道に迷って約30分、タワーマンション1棟で30分かかっています。時給にすると675円です。
なぜ50代で「重ねる」ことを考えるのか
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年分、2026年3月公表)では、男性の一般労働者の所定内給与は、55〜59歳の445,600円が一番高く、60〜64歳で358,500円(19.5%減)、65〜69歳で304,300円(31.7%減)になっています。
あくまで平均で、人によって大きく違います。それでも平均で見ると、60代前半で毎月87,100円ほど下がる計算です。これを副業1本で埋めようとすると、その1本にかなりの時間を差し出すことになります。
自分の場合、先に下がってきたのは体のほうでした。
コロナ禍で本業の仕事が減った時期、自分は1日7時間、配達で走っていました。残った本業もこなしていたので、寝る以外はほとんど働いている生活です。それで配達だけで月25万円前後になりました。いまは体調のこともあって1日3時間を上限にしていて、月の手取りは平均すると10万円前後です。この違いについては、前に別の記事で詳しく書きました。
そして今月は、その3時間すら走れない週が続いています。体調を崩して9月3日から6日まで配達を休み、9月7日からの週は、11件・6時間35分・6,233円でした。
1本の副業に大きく頼るほど、その1本は自分の体力と一緒に下がっていきます。これが、重ね方を考えるようになった理由です。
足し算は、全部が自分の体1つにぶら下がっていました
自分は、本業を入れて4本の柱を持っているつもりでいました。本業、配達、発信、FXです。
数字を並べ直すと、こうなります。配達は約5年、主に使っている1社分だけで累計20,128件(8月時点)。発信のほうは、ブログもnoteもSubstackもXも、正直に書きますが、今の時点でまだ一円にもなっていません。今年の4月9日にKindleで出した小説は、4か月あまりで販売0冊、ロイヤリティ0円です。
FXは、この記事では収入源に数えません。8月10日の週から4週間で、口座は116,637円から10,607円になりました(9月4日時点)。月単位のプラスがまだ安定していない以上、収入の欄に書ける状態ではないと思っています。
つまり、お金になっている副業は配達の1本です。そしてその1本は、自分が漕がなければ0円です。
これが足し算でした。本数は増えているのに、どれも自分が動いた時間の分しか進まない。4本あるように見えていたものは、全部、自分の体1つにぶら下がっていました。
走れなかった週の記録に、自分はこう書いています。体を使う副業は、休んだ週にゼロになります。当たり前のことなのに、数字で突きつけられるまで、本当の意味では分かっていませんでした。
増やしすぎたときの代償は、時間と体に出ます
足し算の代償は、自分だけの話ではないようです。
厚生労働省の委託調査の報告書(2025年3月)に、副業をしている正社員932人に「実際に感じた難しさ」を聞いた結果が載っています。上から、休日などの休息時間が減る30.8%、本業との両立(時間管理)26.3%、体力面や健康面の管理24.2%、期待したほどの収入が得られない20.5%でした。
上位3つは、どれも時間と体の話です。お金の不満は4番目でした。
自分の場合、資金繰りがぎりぎりの中でも配達に出続けた先で、今年の1月に身体に止められました。心臓のことを医師に言われて、お酒をやめ、塩を減らし、生活のルールが一気に変わりました。あとから振り返って思ったのは、自分自身の体にすごい負担をかけていたんだな、ということです。気合で乗り切ろうとして、身体に止められた。それが正直なところです。
会社に雇われて副業をする場合、本業と副業の労働時間は、原則として通算して管理することになっています。一方で、自分のような業務委託の配達には、上限を決めてくれる仕組みがありません。上限は自分で置くしかない。自分が1日3時間で切るようにしているのは、そのためでもあります。
掛け算は、お金より先に起きていました
では、掛け算とは何か。自分の配達の3時間で実際に起きていることを並べてみます。
1つめは、もちろん収入です。
2つめは、体を動かす時間です。配達はいずれ「健康のために体を動かす時間で、なおかつ稼げてしまう時間」にして、3時間以内に収めたいと考えています。
3つめは、思いつきです。自分の思いつきは、だいたい自転車の上で来ます。坂を下っている最中や、赤信号で足をついた瞬間です。いまは胸に録音デバイスをつけて、「アイデア。トレード中にこれをやる。以上」と声で残しています。それがそのまま記事の材料になっています。
4つめは、物語です。自分は配達をしながら、耳で小説を聴いています。届ける途中で、何度も泣いたこともあります。Kindleで小説を出したとき、連作短編という形を選んだ理由の1つは、その頃に物語が身近だったことでした。主人公は、昼はフードデリバリーをしている54歳の男です。
1回の3時間が、収入と、体と、記事の材料と、物語に、同時に効いています。時間は1秒も増えていないのに、効いている先が増えている。 自分が言う掛け算は、これのことです。
数えてみると、今年の4月から9月までに、配達の話が出てくるnote記事は40本ありました。週次レビューや、配達で使う道具の話も含めた数です。
ただし、ここは正直に書いておきます。掛け算の先にある柱は、どれもまだ0円です。 記事も小説も、お金になるとしても入ってくるのはずっと後で、入ってくる保証もありません。掛け算で増えたのは、いまのところ収入ではなく、材料です。
重ねる順番は、「すぐ現金になるもの」が先でした
自分が配達を1本目にしたのは、順番を計算したからではありません。約5年前、初めて配達バッグを背負った日の自分は、「これで毎月の返済が少しはラクになるはずだ」と考えていました。登録すればすぐに始められる、というのも大きかったです。
副業のフードデリバリーで一番助かったのは、週で締めて、翌週の火曜日には収入が入ってくることでした。月末を待たなくても、毎週決まった曜日にお金が入る。返済に追われていた自分には、それが何より心強かった。フードデリバリーには、本当に助けられました。
同じJILPTの調査の詳しい報告では、副業をする理由(複数回答)として「ローンなど借金や負債を抱えているため」が11.3%、「定年後に備えるため」も11.3%ありました。自分の動機は、副業をしている人の1割強が抱えている、ありふれた動機のひとつです。
振り返ると、順番はこうなっていました。1本目は、時間を売って、確実にすぐ入るもの。2本目から先は、時間を売らずに、入るとしても遅れて入るもの。1本目で毎月の下支えを作りながら、1本目の行動そのものを2本目以降の材料として使っていく。
逆の順番、つまり下支えのないまま「遅れて入るもの」だけで始めていたら、お金が入ってくる前に、自分のほうが干上がっていたと思います。時間を売らない収入の組み立て方そのものは、10月の記事で改めて書きます。
足さなかったもの、断ったもの
増やす話ばかりだと片手落ちなので、減らした話も書きます。
自分はこれまで、「儲かりそうか」で副業を選んでは、3日か、長くて2週間でフェードアウトすることを何度も繰り返してきました。並べ直してみると、消えたものは全部、新しい時間を作らないと成立しないものでした。今やっている行動の隣に置けるものだけが、残っています。
そして今月、自分は1行だけ決めました。
「9月は、新しいことを1つも足さない」
新しい案件の話が来ても、9月のうちは返事を保留する。増やさないと決めておけば、判断する余地がなくなります。
ところが、その9月に、自分は足す話を自分から聞きに行っていました。走れなかった週に、在宅でできる仕事の情報を集めて、無料の診断会に申し込んだのです。話を聞いていくと、最後に出てきた料金は100万円単位で、「9月10日の18時まで」という期限つきでした。
断りました。助かったのは、話を聞く前に、もう1行「その場では決めない」と決めていたことです。その場では「持ち帰ります」とだけ伝えて、一晩おいて、自分の予算と使える時間を紙に書き出してから判断しました。詳しい経緯は、9月11日のnoteに書いています。
足さないと決めた月に、足す話の前まで行っている。自分の意志は、正直この程度です。それでも、先に置いた1行のおかげで、金額を提示された画面の前では決めずに済みました。
体が落ちた週ほど、人は焦って、一番高いものに手を出したくなります。重ね方の話で一番大事なのは、何を足すかより、足さない時期を先に決めておくことなのかもしれません。
お金の柱と、つながりの柱
最後に、少し先の話です。
財務省の広報誌『ファイナンス』2025年10月号に、副業をする理由を年代別に整理した資料が載っています(リクルートワークス研究所の全国就業実態パネル調査)。50代は「生計維持」が50.1%で、「自由なお金の確保」32.1%、「人脈づくり」12.5%と続きます。これが70代になると、「時間にゆとりがある」「知人に頼まれた」「社会に貢献したい」といった理由が伸びていくそうです。
50代の副業は、食べるための副業です。自分もそうです。ただ、10年、15年先を考えると、お金のためだけの柱しか持っていない状態は、それはそれで危うい気がしています。
自分の発信は、いまのところ0円の柱です。このブログを読んでいるのは、ほぼ自分だと思いながら書いています。それでも、自分のように悩み切った人が一人でもいる限りは続ける、と決めて書いています。お金の柱にはまだなっていませんが、たぶんこれが、自分にとってのつながりの柱なのだと思います。
1本止まっても、生活が止まらない状態
2025年に海外の公衆衛生の学術誌に載った研究レビューでは、家計が打撃から立ち直る力を支えるものとして、貯蓄の習慣や借入の管理と並んで、副業を含む収入源の多様化が挙げられています。
難しく言うとそうなりますが、自分の言葉にすると、1本が止まっても、生活が止まらない状態です。掛け算は、収入を何倍にもする技術ではありません。その状態に少しずつ近づくための、行動の置き方の話だと思っています。
自分はまだ、そこに着いていません。今月の配達は体調でほとんど走れていないし、発信も小説も0円のままです。ただ、1日7時間走っていた頃の自分と比べると、同じ3時間が、1つではなく4つの先に効くようにはなってきました。数字は小さくていいので、その3時間を切り売りして終わらせない置き方を、これからも試していきます。
その途中経過は、配達の数字も、0円の柱の数字も、noteにそのまま残しています。同じように小さな副業を抱えて迷っている人がいたら、noteをフォローしてもらえるとうれしいです。

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