Kindle出版は「借金中の50代」にできる副業か──始める前に見ておきたい3つの現実

Kindle出版の作り方

結論から書きます。Kindle出版は、お金をかけずに始められる副業です。ここは本当です。ただ、返済の足しにするには入金が遅く、時間あたりの稼ぎも読めません。借金がある人にとっては「返済の柱」ではなく「返済とは別枠の小さな実験」として置くのが、自分の答えです。

自分は今年の4月に、小説を1冊Kindleで出しました。8月の時点で、販売は0冊、ロイヤリティは0円です。その話は前に別の記事で、市場の棚の狭さと収益の仕組みから書きました。今日はそこを繰り返さずに、もう一歩手前の話をします。お金の余裕がない50代が、副業としてKindle出版を選んでいいのか、という話です。

借金があると、「お金がかからない副業」に目が向きます

返済に追われていると、副業を選ぶときの最初の物差しが「いくらかかるか」になります。これは自然なことだと思います。自分もそうでした。

コロナ禍で本業が減ったとき、自分は副業フードデリバリーに1日7時間ほど入って、そこから月25万円前後を返済や支払いに回していました。寝る時間以外はほとんど仕事、という時期です。あのころの自分にとって、元手のいる副業は最初から選択肢に入りませんでした。(会社の借金の考え方は別の記事にまとめています。)

Kindle出版は、そういう人の目に留まりやすい副業です。パソコンがあれば始められて、在庫を抱えることもなく、出版そのものにお金はかかりません。夜中でも書けますし、本業と時間がぶつかりません。書いたものは、出したあともずっと棚に残ります。

ここは誠実に認めておきます。借金がある人にとって「初期費用がかからない」というのは、本物の強みです。

現実その1:入金は、売れた月の末日から約60日後です

ただ、返済をしている人にとって大事なのは、いくら稼げるかと同じくらい、いつお金になるかです。

KDPの公式ヘルプには、ある月に最低売上金額を満たすと、その月の末日から約60日後にロイヤリティが支払われる、と書かれています。たとえば10月に売れた分は、10月31日から数えて約60日後、年をまたいだあたりで口座に入る計算です。しかも、最低売上金額に届かなければ、その月の分は翌月以降に持ち越しになります。

副業フードデリバリーは、報酬が1週間ほどで手元に来ます。今週の稼ぎが、来週の支払いに間に合います。自分が返済に追われていた時期に助かったのは、まさにここでした。(フードデリバリーは借金返済の副業になるか)

Kindle出版は、今月の返済日には間に合いません。来月の返済日にも、たぶん間に合いません。資金繰りの穴を埋める副業ではない、ということは、始める前に分かっておいたほうがいいと思います。

現実その2:100時間を時給にすると、比べる相手がはっきりします

自分が1冊目にかけた時間は、執筆から推敲、表紙、登録まで含めて、ざっくり100時間前後です。

その100時間で入ってきたお金は、0円です。時給にすると、0円になります。

同じ100時間を、副業フードデリバリーに回していたらどうだったか。自分の記録で、クエスト込みの売り上げ総額を稼働時間で割ると、注文が多かった8月の週で時給約1,446円、閑散期に入った9月の、稼働3日だけの週で約947円でした。100時間に掛け直すと、9万4,700円から14万4,600円くらいになります。

もちろん、これは比べ方として少し意地が悪いです。本は一度出せば、売れれば何年でもお金を生む可能性があります。副業フードデリバリーは、乗った時間の分しかお金になりません。性質の違うものを同じ物差しで測っている自覚はあります。

それでも、借金がある人にとっては、この物差しで一度測っておく価値があると思っています。返済に使える時間は限られていて、その100時間をどこに置くかで、手元に残るものがはっきり変わるからです。自分の場合、100時間で0円でした。売れる人もいます。ただ、売れるかどうかを事前に読む方法を、自分は持っていませんでした。収入が読めないものは、返済計画には組み込めません。

現実その3:一番のリスクは、最初にお金をかけることです

Kindle出版そのものにはお金がかかりません。それなのに、お金を失う人がいます。出版のノウハウを教える講座や、代わりに作ってくれる代行サービス、継続のコンサルティングなどに、最初にまとまったお金を払ってしまうケースです。

国民生活センターが2026年9月16日に出した発表によると、ビジネス講座に関する相談は、2020年度の1,169件から、2025年度には3,551件まで増えています。2026年度は7月31日までの登録分だけで1,121件で、前の年の同じ時期の821件を上回っています。契約金額の平均は、Web会議を使った電話勧誘販売で79万円、通信販売で48万円でした。相談事例では、SNSの広告から説明会やWeb会議に誘導されて、講座の勧誘だと知らされないまま話を聞き、その場でクレジットを組んで契約した、という流れが紹介されています。(勧誘の見抜き方はこちらの記事にも書きました。)

Kindle出版に限った話ではありません。特定の事業者を指して言うつもりもありません。ただ、借金がある人にとって、副業を始めるためにさらに借りるというのは、一番避けたい形です。「お金がかからない副業」の入口で数十万円を払ってしまえば、そこから先にどれだけ売れても、取り返すまでの道のりは長くなります。

もうひとつ、最近の事情として書いておきます。KDPでは、AIが作った文章や画像(表紙も含む)を使って出版するとき、その旨を申告することになっています。自分で書いたものをAIで整えた程度なら対象外ですが、AIが作った中身は、あとから大きく手直ししても「AIが作ったもの」として扱われます。「AIで量産すれば返済の足しになる」という話を見かけたら、まずこの公式のルールを読んでからでも遅くないと思います。

もし勧誘を受けて迷ったら、消費者ホットラインの188番に電話すると、近くの消費生活センターにつないでもらえます。

自分は、講座に1円もかけませんでした

1冊目を出すとき、自分は講座にも代行にも、1円もかけていません。表紙などで少し持ち出しはありましたが、それくらいです。

当時の自分がそこまで考えていたかというと、正直、あやしいです。副業の情報を読んで感化されて動いた、というのが本当のところですし、出す前に確かめるべきことも確かめていませんでした。結果は0冊、0円です。

それでも、ここだけは良かったと思っています。売れなかった1冊は、自分の100時間を持っていきましたが、借金は増やしませんでした。0円で終わったことと、マイナスで終わったことの間には、大きな差があります。返済中の人が副業で一番守るべきなのは、たぶんこの差です。

それでも書き続けられたのは、1行のルールのおかげでした

売れなかったあと、自分は書くこと自体をやめませんでした。理由は、根性ではありません。

「毎日書いて、公開する」。決めたのはこの1行だけです。

自分は意志が弱いほうなので、気合で続けるのはとっくに諦めています。その代わりに、何をするかを1行で決めてしまう。トレードでも、副業フードデリバリーでも、同じやり方で崩れにくくなりました。書くほうも同じで、毎日何かを書いて外に出していると、売れなかった1冊のことも、こうして数字ごと書けるようになりました。

そして今、2冊目の原稿を書き終えて、出版の準備をしています。今回も講座にはお金をかけていません。前回の反省から、どの棚に並ぶのか、どういう計算でお金が入るのか、出したあと何をするのか、この3つを確かめてから出すつもりです。売れるかどうかは分かりません。ただ、返済のお金をあてにしない場所で、小さく試すことはできます。(1冊目の制作手順は、連載の第1回から書いています。)

選ぶ前に、3つだけ見てください

借金がある50代がKindle出版を始めるかどうか。自分は、やめておけとも、やるべきだとも書きません。判断の材料として、自分が見ておけばよかったと思う3つだけ置いておきます。

ひとつめは、初期費用です。Kindle出版は本来、出版にお金がかからない副業です。もしどこかで、始めるためにまとまったお金を求められたら、その時点で一度手を止めてください。

ふたつめは、入金のタイミングです。売れた月の末日から約60日後。返済日に間に合わせたいお金は、もっと早く現金になる仕事で作るほうが安全です。

みっつめは、時給換算です。かける時間を、ほかの副業に回したらいくらになるか。一度だけ計算しておくと、書くことを「返済のための仕事」にするのか、「返済とは別枠の実験」にするのか、自分の中で線が引けます。

ちなみに、副業の収入が出た場合の確定申告は、給与を1か所から受けている人なら、給与以外の所得の合計が20万円を超えるかどうかが目安になります。所得の区分や経費の扱いは人によって違うので、国税庁の案内を読んで、迷ったら税務署に相談してください。

書くことが好きで、書いたものを形にしておきたいなら、Kindle出版は悪くない場所だと思います。ただ、それは返済が苦しいときに頼る副業ではなく、返済とは別のところで、自分の100時間を賭けてみる場所です。自分はそういうつもりで、2冊目を出します。

続きは、noteで書いています

2冊目をどう出して、どうなったかは、まだ決着していません。現在進行形の試行錯誤は、noteのほうに書いています。

売れなかった側の記録も含めて読みたい人がいたら、noteをフォローしておいてください。今日はそれだけで大丈夫です。


参考

Amazon KDP「お支払いサイクル」/Amazon KDP「コンテンツガイドライン」(AI生成コンテンツの開示)/国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日)/国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

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