経営者保証に関するガイドラインとは|「破産しかない」と思う前に知っておきたい公式ルート

50代の逆転戦略

会社の借金に個人保証を入れている。もし返せなくなったら、家も貯金も全部持っていかれて、破産するしかない——夜中にそんなことを考えて、スマホで検索したことはないでしょうか。

自分がその書類にサインしたのは、起業したばかりの頃でした。正直に言えば、あの時はワクワクしていました。「これでお金が借りられるんだ」。頭にあったのはそれだけです。何年か後にこの一枚がこれほど重くのしかかってくるとは、まったく考えていませんでした。

説明されたことは覚えています。ここに署名を、ここに押印を、と。説明されなかったのは、この書類が何年後の自分に何をするのか、ということでした。もっとも、仮に説明されていたとして、あの頃の自分に聞く耳があったかは分かりません。

自分もかつて、保証という言葉の重さを分からないままサインした一人です。だからこそ、この記事では「破産の手前に、公式のルートがひとつある」という事実を紹介したいと思います。それが「経営者保証に関するガイドライン」です。

経営者保証とは何か

中小企業や個人事業が金融機関からお金を借りるとき、経営者個人が会社の連帯保証人になる。これが経営者保証です。会社が返せなくなれば、経営者が個人の財産で返す約束です。

長いあいだ、日本の融資では「社長の個人保証はセットで当たり前」でした。会社の借金と自分の人生が、一枚の書類で結びついてしまう。事業がうまくいかなくなったとき、「会社を畳む=自分の人生も終わり」に見えてしまうのは、この仕組みのせいでもあります。

「保証」という名前じゃない書類もある——重畳的債務引受

ここでひとつ、見落とされがちな話をします。サインした書類の名前が「保証契約」ではない場合があるのです。「重畳的債務引受」——現在の民法では「併存的債務引受」と呼ばれる契約です。2020年4月の民法改正で条文に明記されました。

保証とどう違うのか。保証人は「会社が返せなくなったら代わりに返す」という、あくまで二番手の立場です。ところが債務引受人は、最初から会社と並んで同じ借金を背負う「債務者本人」になります。名前に保証と付いていないのに、負担は保証と同じか、場合によってはそれ以上に重い。しかも、保証人を守るために民法が用意しているルールが、債務者本人にはそのまま及ばないことがあります。

この言葉には、自分にも見覚えがあります。起業から五、六年が経った頃、経営が行き詰まって支払いが厳しくなり、返済条件の変更——リスケを繰り返していた時期でした。書類を書くたびに「連帯保証人」や「債務引受人」と記入していて、これはどういう意味なんだろう、とぼんやり思っていました。地元の信用金庫の担当の方が書類の余白に大きく見本を書いてくれて、「重畳的債務引受人。これを見て、この通りに書いてください」と言われた。その場面だけを、妙に鮮明に覚えています。意味は分からないまま、字だけを写していました。あれが何のための書類だったのかが腑に落ちたのは、ずっと後のことです。

では、この形で会社の借金を背負った経営者は、ガイドラインを使えないのか。ここには救いがあります。ガイドライン本文の注記には、併存的債務引受を行った経営者であっても、債権者から実質的に経営者保証人と同等の効果を期待されているものは含む、と書かれています。書類の名前が「保証」でないからと諦める必要はない、ということです。自分のサインした書類がどちらなのか分からなければ、それこそ後で紹介する公的窓口で、書類ごと確認してもらうのが確実です。

経営者保証に関するガイドラインという自主ルール

「経営者保証に関するガイドライン」は、全国銀行協会と日本商工会議所が2013年12月にまとめ、2014年2月から使われているルールです。法律ではありません。金融機関と経営者が自主的に守る取り決めです。

ただし「法律じゃないなら意味がない」とは言い切れません。金融庁が毎年、金融機関ごとの活用実績を集計して公表しており、金融機関側も無視できない状態が続いています。2026年6月にも2025年度の実績が公表されたばかりです。

このガイドラインには、大きく2つの場面があります。ひとつは「これから借りるとき、保証なしで借りられる条件」。もうひとつは「返せなくなったとき、保証債務をどう整理するか」。夜中に検索している人にとって切実なのは、後者だと思います。

破産とは違う「残せるもの」

会社が立ち行かなくなり、保証債務を履行しなければならなくなったとき。このガイドラインに沿って債務整理をすると、破産とは違う扱いが検討される余地があります。

まず、生活費です。破産で手元に残せる自由財産は原則99万円までですが、ガイドラインでは、それに加えて年齢などに応じておおよそ100万円から360万円程度の生活費を残すことが検討されます。

次に、自宅です。「華美でない自宅」であれば、住み続けられる可能性が検討されます。ただしここは注意が必要で、「華美でない」かどうかの線引きは決まっておらず、最終的には債権者である金融機関が個別に判断します。必ず残せる、とは言えません。

そして、返しきれなかった残りの債務は、弁済計画をきちんと履行すれば原則として免除される。さらに、破産と違って信用情報機関に登録されない。つまり、いわゆるブラックリストに載らずに再出発できる可能性がある、ということです。

全部が約束されているわけではありません。要件があり、債権者との合意が前提です。それでも「破産一択だと思っていた」人にとって、選択肢がもうひとつあるという事実は、知っているだけで夜の景色が少し変わるのではないでしょうか。

「保証にサインして当たり前」の時代が終わりつつある

数字も変わってきています。金融庁の集計では、民間金融機関の新規融資の件数に占める、経営者保証に依存しない融資の割合は、2024年度が52.9%、2025年度が55.7%でした(いずれも現時点の集計値)。半分を超えています。

背景には、2022年12月に金融庁・経済産業省などがまとめた「経営者保証改革プログラム」があります。2024年3月からは、保証料を少し上乗せすれば経営者保証なしを選べる信用保証制度も始まりました。

これから借りる場合の目安として、ガイドラインは3つの条件を挙げています。法人と経営者のお金がきちんと分かれていること。法人の資産と収益力だけで返済できる財務であること。金融機関に財務情報を適時きちんと開示していること。この3つがそろうほど、保証なしの融資に近づきます。

ひとつ目の条件について、悔いが残っていることを書いておきます。自分は一人で会社をやっていたこともあって、会社のお金と自分のお金が、いつのまにか入り繰りになっていました。後になって経営者保証を外せるかもしれないという場面が来たとき、外せなかった理由が、まさにそれでした。日々のお金の分け方が、何年も先の自分の選択肢を決めていた。当時はそんなふうには考えていませんでした。

もし今、会社と個人のお金がまだ混ざったままの段階でこの記事を読んでいる方がいるなら、そこだけは分けておいて損はないと思います。数年後に効いてくる話です。

相談するなら公的な窓口へ

このテーマで検索すると、「無料相談はこちら」と誘導する事務所の広告が大量に出てきます。それが悪いとは言いませんが、このブログでは誰も紹介しませんし、紹介料も受け取りません。

公的な窓口だけ挙げておきます。事業の資金繰りや再生の相談は、各都道府県にある中小企業活性化協議会。法律的な整理の入り口は、法テラス。どちらも無料で使えます。まずはそこからで十分だと思います。なお、保証にサインした側が実際にどう動いたかという当事者の話は、会社の借金、破産だけが道ではないという話に書きました。制度の中身はこの記事、夜中に検索していた側の記録はあちら、という分け方です。

まとめ——知らないまま怖がらない

経営者保証に関するガイドラインは、魔法の杖ではありません。要件があり、相手のある話で、うまくいくかは個別の事情によります。

ただ、「会社の借金=家を失って破産」という一本道のイメージだけで夜中に検索し続けるのと、「破産の手前に公式のルートがある」と知った上で公的な窓口に相談するのとでは、立っている場所が違います。

自分は専門家ではないので、判断はしません。事実だけ並べました。ここから先は、あなた自身と、公的な窓口で確認してみてください。

サインした側の生々しい話——保証と借金にどう向き合ってきたかの記録は、noteに書いています。制度の話ではなく、当事者の夜の話が読みたい方はそちらへどうぞ。

📎 note:KK@副業クロスロード|note

※本記事は公的資料に基づく一般的な情報です。個別の判断は、必ず公的窓口や専門家に確認してください。

(参考資料)
・中小企業庁「経営者保証」 https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/index.html
・金融庁「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績(2025年度) https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20260626/20260626.html
・金融庁「経営者保証改革プログラム」 https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/20221223-3.html
・中小企業庁 保証料上乗せ型の信用保証制度 https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240315.html
・全国銀行協会 ガイドライン本文・Q&A https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/
・法務省 民法(債権法)改正・債務引受に関する見直し https://www.moj.go.jp/content/001257682.pdf

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