寝不足の日でも、体は意外と動きます。仕事にも行けるし、副業もこなせる。だから「今日も大丈夫だった」と思ってしまいます。けれど、先に崩れているのは体力ではなく判断のほうかもしれません。この記事では、睡眠が足りない日に判断がどう変わるのかを、公的なガイドと研究をもとに整理します。
自分の場合、ふだんは21時台か22時台に布団に入り、朝は5時台に起きています。実際に眠れている時間は5.9時間から7.5時間のあいだで、時間だけ見ればそこまで悪くありません。ただ、副業のフードデリバリーを増やした週には、夜中に目が覚めている時間が長くなっていました。配達が原因かどうかは、自分では分かりません。そのときの数字は、noteに残しています。
関連note:疲れているのに夜中に目が覚める50代が、副業フードデリバリーを4時間続けた日の数字を見て決めたこと
日本の大人の4割前後が「6時間未満」
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人に対して、個人差はあるものの6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保すること、そして「睡眠で休養がとれている感覚」を高めることを勧めています。
一方、令和5年の国民健康・栄養調査では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性で38.5%、女性で43.6%でした。同じガイドには、2021年のOECDの比較で日本人の平均睡眠時間が33カ国中もっとも短かった、とも書かれています。
本業のあとに副業をしていれば、削りやすいのは睡眠です。これは意志の問題というより、時間の足し算の結果だと思います。
50代は、眠りそのものが変わる

若いころと同じ時間だけ布団に入っても、同じようには眠れなくなります。健康な人3,577人分のデータをまとめた研究(Ohayonら、2004年)では、大人になってから10年ごとに、睡眠時間は約10分短くなり、深い睡眠の割合は約2%ずつ減り、夜中に目が覚めている時間は増えていく、と報告されています。
これは平均の話で、個人差は大きいものです。また「眠れる量が減る」ことと「必要な睡眠が減る」ことは同じではありません。夜中に何度も目が覚める、いびきを指摘される、日中に強い眠気がある、という場合は病気が隠れていることもあるので、医療機関に相談してください。
寝不足の日に落ちるもの① 反応の速さ
起き続けた時間と、お酒を飲んだときの成績を比べた実験があります(Williamson & Feyer、2000年)。17〜19時間起き続けると、一部のテストでは、血中アルコール濃度0.05%のときと同じか、それより悪い成績になりました。
朝6時に起きた人なら、17時間後は夜の23時です。本業を終えてから夜に副業やトレードをする人にとっては、ふつうに通る時間帯です。
※測ったのは反応の速さなどの単純な課題で、「一部のテストで」という限定つきです。仕事や投資の判断そのものを測った実験ではありません。
寝不足の日に落ちるもの② 「落ちている」という自覚
個人的にいちばん怖いと感じたのは、この研究です(Van Dongenら、2003年)。健康な成人に、布団に入る時間を6時間に制限した生活を2週間続けてもらったところ、注意力のテストの成績は日を追うごとに落ち続けました。ところが、本人が感じる眠気は最初に少し上がっただけで、その後ほとんど増えませんでした。
成績は落ちているのに、本人は「慣れた」と感じている。つまり「自分は6時間で大丈夫」という感覚は、あまり当てになりません。
※対象は20〜30代で、測ったのは主に注意の持続です。50代で確かめた実験ではありません。
自分にも心当たりがあります。腕時計の記録で実睡眠が5.4時間、安静時心拍も前後の日より大きく跳ね上がっていた日がありました。ところが自分は、その日に何かおかしいとはほとんど感じていませんでした。数字を見返して、ようやく気づいた形です。
関連note:安静時心拍が128だった日、自分は何も感じていませんでした
寝不足の日に落ちるもの③ 損と得の見え方
トレードをする人に関係が深いのは、ここです。一晩眠らなかった人にお金の選択をしてもらった実験(Venkatramanら、2011年)では、選び方が「損を小さくする」方向から「得を大きくする」方向へ偏りました。別の実験(Killgoreら、2006年)では、約2日眠らなかった人は、損だと学習できるはずの選択肢を選び続ける傾向がありました。
感情の面でも、約35時間眠らなかった人は、不快な画像を見たときの扁桃体(感情に関わる脳の部位)の反応が、よく眠った人より大きかったという報告があります(Yooら、2007年)。
※どれも若い人の徹夜実験で、人数も多くありません。実際のトレードで確かめられたものではなく、「2時間足りない日」にそのまま当てはまるとも言えません。それでも、ロットを上げてしまう、負けた直後に取り返しに行く、「もう一回だけ」が止まらないという崩れ方と、向きは同じです。
対策は「がんばって寝る」より「寝不足の日の決めごと」
睡眠を増やすのが本筋です。ただ、本業と副業を抱えていると、足りない日はどうしても出ます。そこで、足りなかった日にどうするかを先に決めておく、という考え方を取ります。寝不足の日は自分の感覚が当てにならないので、その日の自分に判断させないためです。
- 朝、睡眠時間を数字で記録する。「眠いかどうか」ではなく「何時間寝たか」で判断する
- 基準を下回った日は、お金の判断を小さくする。トレードは見送るか、ロットと回数の上限を下げる
- 起きてから17時間を過ぎたら、新しい判断を始めない
- 眠気が強い日は、午後の早い時間に30分以内の昼寝をする(厚生労働省の「睡眠指針2014」が勤労世代に勧めている方法です)。昼寝は応急処置で、夜の睡眠不足の埋め合わせにはなりません
自分がいま決めているのは、「夕方4時以降は心拍を測り、決めた数字以上ならトレードを建てない」というルールです。疲れているかどうかを自分の感覚で申告するのをやめて、数字で判断する形にしました。このルールを決めた週の記録は、noteに残しています。
関連note:【週次レビュー】FXのルールを守れない50代が、決めた3つを1週間で全部越えて分かったこと
眠りの質を上げる具体的な方法は、これまでの記事にまとめています。
- 「起きる時間」をそろえるだけ。50代の疲れが抜けない本当の理由
- お金をかけずに深い睡眠を増やす「入浴90分前」の習慣
- 50代の睡眠の質を変える入浴とスマホの習慣
- 50代の朝活は「睡眠を削らない」が鉄則
- 体を壊さない副業の続け方
まとめ
寝不足の日は、反応が遅くなり、損と得の見え方が変わり、しかもそのことに自分では気づきにくくなります。だから「今日は大丈夫そうだ」という感覚ではなく、睡眠時間の数字と、先に決めたルールで動く。50代が本業と副業とトレードを長く続けるには、睡眠を根性の話から仕組みの話に移すことが必要だと考えています。
※この記事は一般的な情報をまとめたもので、診断や治療の代わりにはなりません。睡眠の不調が続くときは、医療機関に相談してください。
参考資料
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」
- Ohayon et al. (2004) Sleep 27(7)
- Williamson & Feyer (2000) Occupational and Environmental Medicine 57
- Van Dongen et al. (2003) Sleep 26(2)
- Killgore et al. (2006) Journal of Sleep Research 15(1)
- Venkatraman et al. (2011) Journal of Neuroscience 31(10)
- Yoo et al. (2007) Current Biology 17(20)
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