Kindle出版は何から始める?「情報収集だけで動けない人」が小説を1冊書き上げた最初の一歩|第1回「何から始める?」

Kindle出版の作り方

【連載:ゼロから小説をKindle出版した全工程|第1回】

この連載は、特別なスキルも実績もなかった私が、ミステリー小説を1冊書き上げてKindle(KDP)で出版するまでの工程を、できるだけ手法に踏み込んで記録したものです。全5回を予定しています。第1回の今回は、原稿を1文字も書く前——「何から始めればいいのか分からない」という、いちばん多くの人が止まってしまう場所の話をします。


「情報収集」は、実は前に進んでいない

Kindle出版をやってみたい、と思ったとき、たいていの人がまず始めるのは情報収集です。私もそうでした。「KDP やり方」「Kindle 売れる ジャンル」「電子書籍 表紙 作り方」——検索して、ブログを読んで、YouTubeを見て、ノウハウのスクリーンショットを溜めていく。やった気にはなる。でも、原稿は一文字も増えていない。

情報収集は「準備をしている自分」を感じさせてくれます。だから心地いい。けれど、集めた情報の多くは「何を書くか」が決まっていないと使えないものばかりです。表紙の作り方も、売れるジャンルの分析も、肝心の中身がなければ宙に浮きます。順番が逆だったんです。

私が止まっていた本当の理由は、情報が足りないことではありませんでした。「自分には売れるスキルなんてない」という思い込みでした。プログラミングでも、マーケティングでも、英語でもいい——何か”教えられること”がないと電子書籍は出せない、と勝手に決めつけていたんです。

「売れるスキル」を探すのをやめた

転機になったのは、考え方をひっくり返したことでした。「売れるスキルがない」ではなく、「自分が本当に時間を使ってきたものは何か」から考え直したんです。

私の場合、それは小説を読むことでした。とりわけミステリーが好きで、何十冊、何百冊と読んできた。「読んできた」というのは、立派なスキルには見えません。でも、好きで長く続けてきたものには、自分でも気づいていない蓄積があります。どんな構成だと先が気になるか。どんな伏線が効くか。どこで読者が裏切られると気持ちいいか——読者としての”体に入った感覚”は、何百時間ぶんの蓄積でした。

だから私は、戦略的に「売れそうなジャンル」を選ぶのをやめました。代わりに、いちばん長く付き合ってきた興味——ミステリーを、自分で書いてみることにしたんです。

この選び方には、もう一つ大きな利点があります。完走できる、ということです。

「最後まで書ける」かどうかで選ぶ

Kindle出版で最初の壁になるのは、売上でも表紙でもなく「原稿が完成しない」ことです。途中で飽きる。自信がなくなる。別の企画が魅力的に見えてくる。書きかけのファイルだけが増えていく——これがいちばん多い挫折パターンだと思います。

戦略で選んだテーマは、熱量が続きません。「売れそうだから」という理由は、書いている最中の孤独な作業を支えてくれない。一方、本当に好きなものなら、しんどい場面でも「続きが読みたいから書く」という力が働きます。私が一冊を完走できたのは、才能ではなく、テーマ選びの段階で”完走できる方を選んだ”からでした。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。私は、最初の一冊に「売れること」を期待していませんでした。

最初のゴールは「売上」ではなく「工程を覚えること」

これは始める前に意識して決めたことです。一冊目のゴールを「売上」に置くと、書いている最中も出版した後も、数字に振り回されてしんどくなります。だから私は、一冊目のゴールを「KDP出版の全工程を、自分の手で一度通すこと」に設定しました。

企画を立て、キャラクターを設計し、原稿を書き、推敲し、KDPで読める形式に整え、登録して公開する。この一連の流れを一度でも自分で通せば、それは二冊目以降ずっと使える「資産」になります。やり方を知っている状態と、知らない状態とでは、次の一歩の軽さがまったく違う。

実際、私の一冊目の売上は振るいませんでした。でも、まったく後悔していません。狙っていたのは数字ではなく工程の習得で、それは確実に手に入ったからです。この連載でこれから紹介していくのは、その「一度通した工程」そのものです。

最初の一歩を、具体的に

もし今あなたが、情報収集だけで止まっているなら、次の三つだけ先に決めてみてください。これだけで、前に進み始めます。

  • 「売れそう」ではなく「いちばん長く付き合ってきた興味」でテーマを選ぶ——完走できる方を選ぶのがコツです。
  • 一冊目のゴールを「売上」ではなく「工程の習得」に置く——数字のプレッシャーから自由になれます。
  • 表紙やマーケティングの情報収集は、いったん止める——中身が決まるまで、それらは使えません。

次回(第2回)からは、いよいよ具体的な手法に入ります。私が連作ミステリーを書くにあたって最初に作った「キャラクター設計書」——登場人物を、行き当たりばったりではなく設計として組み立てる方法を、実際の作り方に沿って紹介します。


ちなみに、この連載で工程の題材にしているのは、私が実際に書いて出版した連作ミステリー『顔のない探偵へ──倉田修二の事件帖』です。フードデリバリーと介護の仕事をしながら、匿名のSNS探偵として9つの謎を解いていく54歳の男の物語——どんな仕上がりになったのかは、本編で確かめてもらえればうれしいです。

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