小さな利益をコツコツ積み上げては、最後の1回で「ドカン」と吹き飛ばす。FXを続けていると、何度もこの形にはまる人がいます。自分もその一人で、FXを始めてから3年以上、同じ崩れ方を繰り返してきました。
チャートの知識は増えているのに、口座の残高は減っていく。もしいま、そんな状態にいるなら、原因はたぶん手法ではありません。
この記事では、自分の実際の数字を出したうえで、コツコツドカンがなぜ起きるのか、どうやって止めにいったのか、そして最後に何が残ったのかを、1つにまとめて書きます。
コツコツドカンとは
コツコツ積み上げた小さな利益を、1回の大きな損失でまとめて失うことです。たとえば、1回1,000円の利益を20回積み重ねても、1回で3万円負ければ、それまでの20回は全部消えます。
やっかいなのは、これが1回で終わらないことです。繰り返すうちに証拠金が減り続け、最後はトレードそのものを続けられなくなります。
自分の数字:勝率は5割近いのに、3か月でマイナス26万円
まず、自分の実際の数字を出します。
一昨年から去年にかけて、口座を3回以上飛ばしました。1つ目は3倍以上に増やしたあとに全部なくし、2つ目も3倍ほどに増やしたあとに飛ばしています。増やせる時期はあるのに、最後は全部なくす。まさにコツコツドカンの形です。
2026年の1月から3月は、記録が残っています。約定は261回、勝率は47.1%、プロフィットファクターは0.63でした。勝ちトレードの平均は約3,600円、負けトレードの平均は約5,100円です。月別では、1月がマイナス約8万7,000円、2月が唯一のプラスで約3万2,000円、3月がマイナス約20万5,000円。3か月の合計は、マイナス26万円ほどです。
見てほしいのは、勝率が5割近くあることです。勝つ回数と負ける回数は、ほとんど同じでした。違ったのは金額で、勝つときは小さく、負けるときは大きい。1回で26万円を失ったのではありません。小さく勝って大きく負ける形を、3か月かけて積み上げていました。
この数字を出せるのは、毎日の記録をブログとnoteに書き残してきたからです。記録がなければ、「何となく負けていた」で終わっていたと思います。
手法を磨いても直らなかった理由
コツコツドカンに悩むと、最初は「もっと良い手法を探そう」と考えます。ただ、自分の場合、手法の核は最初からほとんど変えていません。学んだのはリオン式と、その師匠筋にあたる及川式で、変えたのは執行足のような細かいところだけです。それでも、崩れ方は同じでした。
理由はシンプルで、コツコツドカンは技術の問題ではなく、心の問題だからです。どれだけ良いルールを持っていても、画面の前で感情が動き出した瞬間に、ルールはただの紙切れになります。ここを正直に認めるまでに、自分はずいぶん遠回りをしました。
自分を崩していた3つの心の動き

振り返ると、自分を崩していたのは、いつも決まった3つの心の動きでした。意志が弱いからではなく、人間なら誰でもはまりやすい反応です。
崩れ方①:利益は急いで確定し、損失は切れない
行動経済学のプロスペクト理論(カーネマンとトベルスキー、1979年)によると、人は同じ金額でも、得る喜びより失う痛みを2倍ほど強く感じます。
そのため、利益が出ると「消える前に確定したい」と焦って早く利確し、損失が出ると「まだ戻るかも」と損切りを先延ばしにします。小さく勝って大きく負ける形が、これで自動的にできあがります。上の数字の「平均の勝ち約3,600円、平均の負け約5,100円」は、まさにこの形でした。
崩れ方②:大きく勝ったあとの「浮かれ気分」
コツコツドカンは、連敗したあとだけに起きるわけではありません。大きく勝ったあとにも起きます。
ある日の朝、自分は+47,000円を取って、口座残高が最高値を更新しました。その直後、通常の9倍のロットで3回エントリーし、その日のうちにマイナス86,000円を超えるところまで落ちました。「今日は調子がいい」「もっと取れる」という感覚は、自信に見えます。でも実際は、リスクが見えなくなっている状態でした。
マーク・ダグラスも『ゾーン 最終章』で、浮かれ気分のときは自分の期待は見えても、起きていることのリスクが見えなくなると書いています。
このときの生々しい記録は、noteに残してあります。
→ noteリンク:浮かれ気分でドカンをやった回
崩れ方③:負けた直後の自分
連敗すると「次こそ取り返す」という衝動が生まれます。頭ではダメだとわかっていても、感情が上回る。及川圭哉さんは『ガチ速FX』で、相場でいちばん危ないのは暴落でも急騰でもなく、負けた直後の自分だと書いています。この言葉が、自分は何年も経ってようやく腑に落ちました。
自分の場合、「この野郎、取り返してやる」と頭にカッと血が上るのが、いちばん危ないサインでした。
チャートを見すぎることも、ドカンの入り口になる
もう1つ、見落としがちな原因があります。チャートを見る時間が長いほど、トレードの回数が増え、回数が増えるほど負けやすくなることです。
UCバークレーのバーバー教授とオーディーン教授の研究(2000年、Journal of Finance)でも、頻繁に売買する個人投資家ほど、手数料を引いたあとのリターンが低いという結果が出ています。長く見ているうちに、根拠の薄い「なんとなくエントリー」が増え、それがドカンの入り口になります。
「次から気をつけよう」では止まらなかった
3つの心の動きに気づいたとき、自分は「次から気をつけよう」と思いました。でも、それでは止まりませんでした。
損失を抱えた瞬間の「取り返したい」も、浮かれているときの「もっと」も、理性より強い力で出てきます。意志の力で抑えようとしても、相手が悪すぎるのです。
だから必要なのは、感情に抵抗することではなく、感情が暴れ出す前に行動を終わらせてしまう「仕組み」でした。
自分が入れた仕組み
いま自分が使っている仕組みは、どれもシンプルです。
損失の上限を金額で固定する。1回のトレードでも、1日の合計でも、損失は1万円まで。ドカンの大きさに、最初からふたをしてしまう考え方です。
エントリーは1回のチャンスにつき1トレードまで。負けても入り直さない。
2連敗したらチャートを閉じる。負けた直後の自分にトレードさせない。
ある程度取れたら、その日は終える。「もっと取れる」と感じたら、それが浮かれ気分のサインだと受け取る。
チャンスがない日はノーポジでいい。以前は理由をつけて入っていましたが、一度ノーポジの日をつくってみたら、「機会損失」ではなく「チャンスまで待てばいい」と思えるようになりました。
どれも、意志ではなくルールで自分を止める、という発想です。
1回の勝ち負けを「確率」で見る
仕組みと並んで、自分をいちばんラクにしてくれたのが、1回の勝ち負けに心を奪われすぎないことでした。
相場では、1回ごとの勝ち負けはほぼランダムに決まります。良い判断でも負けるし、雑なエントリーでもたまたま勝つ。だから1回負けただけで「この手法はダメだ」と判断するのは、そもそも筋が違います。
自分が使ったのは、25回を1セットと決めてしまう見方です。今日の1回がたまたま負けでも、それは25回のうちの1回にすぎない。負けても「想定の範囲内」と思えるようになると、焦って取り返そうとする動きが、自然と静かになっていきました。
1日の「終わり方」を決めておく
もう1つ効いたのが、1日の締め方を決めておくことです。勝った日は「今日はこれだけいただけた」と感謝して閉じる。負けた日は「これは勉強代」と割り切って閉じる。
締め方が決まっていると、勝った日の「もっと」も、負けた日の「取り返す」も、少しずつおとなしくなっていきます。
最後に残った、たった1つの考え方
いろいろな対策を試した先で、自分の中に最後に残ったのは、とてもシンプルな1点でした。
技術は上がっている。手法も機能している。あとは「大きく負けないこと」だけ——。
勝ちを増やそうとするのをやめて、ただ「ドカンをやらない」1点に集中する。そう決めてから、1〜3月のような「3か月でマイナス26万円」という崩れ方は、いまのところ起きていません。「この野郎、取り返してやる」と頭に血が上ることも、だいぶ減りました。
ただ、これで勝てるようになったと言うつもりはありません。勝てる保証はどこにもなく、変わったのは「崩れ方」です。それでも、ドカンを小さくできれば、トレードを続けることはできます。
手法は変えていないのに崩れていた話は、メンタルは手法では直らない──3年負けて残った結論に詳しく書いています。
まとめ
コツコツドカンから抜け出すために必要だったのは、特別な才能でも最強の手法でもありませんでした。
原因は手法ではなく心の反応にあると認めること。崩れるときの3つのクセに気づくこと。意志ではなく仕組みで止めること。1回の勝ち負けを確率のかたまりで見ること。そして最後に、「大きく負けないこと」1点に集中すること。
いきなり完璧にやろうとしなくて大丈夫です。まずは次の1トレードを、決めたとおりに終える。その小さな1回から、土台はつくられていきます。
この記事について
この記事は、自分の実体験がもとになっています。リアルタイムの記録や、実際にドカンをやらかしたときの記録は「副業クロスロード」(note)で発信中です。
→ 2026-05-12 「力はある。なのになぜ全部失うのか——『コツコツドカン』の正体とメンタルの壁」
→ 2026-05-26 「【FX深掘り記事】『コツコツ、ドカン』を卒業したい|25回の訓練、Phase2へ」
参考文献
マーク・ダグラス『ゾーン 最終章——トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』
及川圭哉『ガチ速FX 27分で256万を稼いだ鬼デイトレ』
Barber, B. M., & Odean, T. (2000) “Trading Is Hazardous to Your Wealth.” Journal of Finance, 55(2), 773-806.


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